放線菌の分類と同定

日本放線菌学会は、1985年『放線菌の同定実験法』を刊行し、この分野の実験書として広く活用されてきました。しかし、現在では既に絶版になっています。また、分子生物学の急速な進歩によって放線菌の分類体系が大きく変化してきたため、会員から改定版の刊行が強く求められてきました。

このような背景のもとで、全面的な改訂を企画し、放線菌生物学の進歩に資することを目指しました。3年の歳月をかけ、学会の総力をあげた取り組みで、ここにA4版・410頁の書として『放線菌の分類と同定』を上程するに至りました。日本放線菌学会は、1997年 世界10ヶ国・120人の研究者を著者とし『放線菌図鑑(Atlas of Actinomycetes)』(朝倉書店、12,000円)を出版して国際的に高い評価を得ています。本書は、その姉妹編でもあります。

『放線菌の分類と同定』は、3つのパートと資料により構成されています。第I部は「放線菌概論」、第II部は化学分類や遺伝子解析など「放線菌の同定実験法」、第III部には各論として「放線菌14分類群の分類学的特徴」を記載、更に「実用化された抗生物質の構造式リスト」など4つの資料を収載しました。各章は、それぞれの専門家35人が分担して執筆し、相互に査読を繰り返し質の向上を図りました。

「読者の立場に立った使いやすさ」を編集の基調に据え、また、数百枚にのぼる放線菌の顕微鏡写真を挿入し原核生物でありながら形態分化の進んだこの微生物群の魅力を伝えるよう努めました。また、科研費の支給による格安な価格も本書の大きな魅力です。放線菌はもちろんのこと、微生物に関わる全ての研究者が、座右の書として活用できると自信を持って推奨致します。

詳細

  • 日本放線菌学会編
  • 旧日本学会事務センター刊
  • A4版上製 410頁
  • 2001年2月末刊行
  • 特別価格 4,500円(消費税および送料別)
  • 連絡先: sales@actino.jp

目次

  • 放線菌の観察
    • 巻頭カラー口絵
  • 第I部 放線菌の特徴と同定の手順
    • 第1章 放線菌の基本的な特徴
    • 第2章 放線菌の属の同定手順
  • 第II部 放線菌の同定実験法
    • 第1章 放線菌の形態観察法
    • 第2章 培養性状および生理生化学性状
    • 第3章 化学分類実験法
      • 3-1節 細胞壁のアミノ酸分析法
      • 3-2節 細胞壁のアシル型分析法
      • 3-3節 細胞壁と全菌体の糖分析法
      • 3-4節 メナキノン分析法
      • 3-5節 リン脂質分析法
      • 3-6節 脂肪酸分析法
      • 3-7節 ミコール酸分析法
    • 第4章 遺伝子解析法
      • 4-1節 DNAの調製
      • 4-2節 16S rRNA遺伝子の塩基配列決定法
      • 4-3節 系統解析法
      • 4-4節 DNAのGC含量測定法
      • 4-5節 DNA-DNA相同性実験法
      • 4-6節 遺伝子タイピング技術の利用
  • 第III部 放線菌の各分類群の特徴
    • 第1章 放線菌の分類
    • 第2章 Family Actinomycetaceae
    • 第3章 Family Micrococcaceae and related families
    • 第4章 Family Corynebacteriaceae and related families
    • 第5章 Family Micromonosporaceae
    • 第6章 Families Propionibacteriaceae and Nocardioidaceae
    • 第7章 Family Pseudonocardiaceae
    • 第8章 Family Actinosynnemataceae
    • 第9章 Family Streptomycetaceae
    • 第10章 Family Streptosporangiaceae
    • 第11章 Family Nocardiopsaceae
    • 第12章 Family Thermomonosporaceae
    • 第13章 Family Glycomycetaceae
    • 第14章 Family Frankiaceae and related families
    • 第15章 Other genera
  • 資料1. Order Actinomycetalesの属および種
  • 資料2. 実用化された抗生物質とその関連物質
  • 資料3. 特許における菌株の寄託と記載
  • 資料4. 新種提案の実例

著者リスト(所属は出版当時のもの)

  • 編集長 (Editor in chief)
    • 宮道慎二 (S. Miyadoh, 明治製菓株式会社)
    • 編集委員 (Editorial board)
    • 浜田 雅 (M. Hamada, 微生物化学研究所)
    • 堀田国元 (K. Hotta, 国立感染症研究所)
    • 工藤卓二 (T. Kudo, 理化学研究所)
    • 宮道慎二 (S. Miyadoh, 明治製菓株式会社)
    • 清野昭雄 (A. Seino, 北里研究所)
    • 鈴木健一朗 (K. Suzuki, 理化学研究所)
    • 横田 明 (A. Yokota, 東京大学)
  • 著者 (Author)
    • 天野昭一 (S. Amano, 明治製菓株式会社)
    • 辨野義己 (Y. Benno, 理化学研究所)
    • 榎田竜三(R. Enokita, 三共株式会社)
    • 刑部泰宏 (Y. Gyobu, 明治製菓株式会社)
    • 浜田 雅(M. Hamada, 微生物化学研究所)
    • 橋爪秀樹(H. Hashizume, 微生物化学研究所)
    • 波多野和徳(K. Hatano, 発酵研究所)
    • 堀田国元(K. Hotta, 国立感染症研究所)
    • 石川 淳(J. Ishikawa, 国立感染症研究所)
    • 梶浦貴之(T. Kajiura, 味の素株式会社)
    • 川崎浩子(H. Kawasaki, 大阪大学)
    • 木下直子(N. Kinoshita, 微生物化学研究所)
    • 木塚正明(M. Kizuka, 三共株式会社)
    • 工藤卓二 (T. Kudo, 理化学研究所)
    • 松本厚子 (A. Matsumoto, 北里研究所)
    • 三上 襄(Y. Mikami,千葉大学)
    • 宮道慎二 (S. Miyadoh, 明治製菓株式会社)
    • 宮良孝子 (T. Miyara, 明治製菓株式会社)
    • 中川恭好(Y. Nakagawa, 発酵研究所)
    • 中島由貴 (Y. Nakajima, 理化学研究所)
    • 岡崎尚夫(T. Okazaki, 三共株式会社)
    • 大原浩樹 (H. Ohara, 明治製菓株式会社)
    • 清野昭雄 (A. Seino, 北里研究所)
    • 関 達治(T. Seki, 大阪大学)
    • 瀬崎正次 (M. Sezaki, 明治製菓株式会社)
    • 篠瀬まゆみ (M. Shinose, 北里研究所)
    • 篠崎純子(J. Shinozaki, 味の素株式会社)
    • 庄村 喬 (T. Shomura, 明治製菓株式会社)
    • 鈴木健一朗 (K. Suzuki, 理化学研究所)
    • 鈴木伸一(S. Suzuki, 田辺製薬株式会社)
    • 高橋洋子 (Y. Takahashi, 北里研究所)
    • 田村朋彦(T. Tamura, 発酵研究所)
    • 土崎尚史(N. Tsuchizaki, 日本微生物クリニック株式会社)
    • Gernot Vobis(Univ. Nacional del Comahue)
    • 横田 明(A. Yokota, 東京大学)
  • 出版責任者 (Publication chief)
    • 工藤卓二 (T. Kudo, 理化学研究所)